個人主義とは?(1) アインさんから教えられた編

 確か5ヶ月前であろうか、アメリカで聖書の次にベストセラーである『肩をすくめるアトラス』という本を読み始めた。
この小説で一貫している思想は、個人主義、利己主義およびリバタリアニズムである。これらの思想こそが人類が最終的に到達する究極の倫理観だと断言している。(著者:アイン・ランド)


肩をすくめるアトラス
ビジネス社
アイン ランド

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 この本を途中まで(1000/1200)読んだ感想は、面白くもない三文小説だったということである。
以下に感想を示します。
(1)小説よりも政治・思想の本が高級だと誰か指摘しなかったのであろうか!
 だいたい、政治思想が延々と述べられていて小説とは思えない。小説でなく、政治・思想の分野で出版すべきではなかったか。いくら小説でこの思想が正しいんだよと言われても、「いや小説やからフィクションや」で終わってしまう。
だいたい、小説で語られる思想が人類にとって素晴らしいものでも、科学的データの裏づけを載せることはできないだろう。これでは、単に聖書と一緒で全く根拠のない御伽噺である。
 おそらく、この作者は思想の根拠を定量的に説明する術を持ちえなかったので、小説という形で思想を発表した(悪く言えば逃げた)。この著者が書いた政治・思想本の日本語訳は一冊しかない。

*ちなみに、筆者もアイン・ランドと同様に科学的なデータを示せないので、ご注意を!!

(2)非現実的な例え話は非現実感をより強調させる!
 この小説では、著者の主張を強固にすべく、現実世界ではあり得ない社会システムを仮定している。
例えば、劇中では1930年代のアメリカがたったの数年で資本主義のシステムから革命なしで共産主義へと移行している。いやいや、どう考えても、このような大規模なシステム変更は革命なくして不可能だろう。共産主義になった国を観察してない。一応、この著者もその理由を延々と書いているが、現実味に欠け過ぎている。
 このような仮定を信じるのは、昔に共産主義に嵌まった人、歴史観に欠ける人々しかいないと思う。
よくよく考えれば、アメリカ人は歴史観に欠けている。まさに、のめり込む条件を兼ね備えている。

(3)完全なる引きこもりは、ありとあらゆる不可能を可能とする!
 よく引きこもりなる人々が社会と断絶していると指摘される。しかし、彼らだって社会インフラを必ず使用する。例えば、テレビを見たり、電気を付けたりするなどだ。ところがどっこい、そんなもんを全く必要としない引きこもりが1930年代のアメリカにいたと言われたら吃驚するであろう。まあ、アメリカには外部と一切接触せずに集団で生活する宗教団体があるのも事実である。だが、彼らは近代的な生活を拒否し、中世時代のテクノロジーしか駆使していない。
 だが、この作中に出演される引きこもり軍団は、なんとその狭い狭いコミュニティー中で独自に貨幣を発行し、最新科学を研究し、エネルギーを縦横無尽に取り出せるシステムを使用している(ふざけるなとエネルギー業界関係者は主張したい)。また、居住地が飛行機から発見されないように、コロラド山脈の一角に特殊なシートを張っている(草薙少佐に怒られるぞ)。
ちなみに、このコミュニティーの関係者の多くは素晴らしき活躍をする重要な脇役である。
 超非現実的な世界を仮定しているにも関わらず、現実世界において私の思想は素晴らしいから実行せよと主張するのはおこがましいにも程がある。なぜ、この小説を読んだ評論家はこの事実を指摘しないのであろうか。
ぜひとも、理系の方々にこの引きこもり生活が可能であるかを論じてもらいたい。

(4)やっぱり褒めないと伸びないのよ、古今東西!
 小説という形とはいえ、思想を体系化し、論理的な文章を構築する能力は非常に素晴らしい。この分野において、日本人の作家や政治評論家は二束三文の価値しか持たない。もうちょいと日本人は、己の思想を体系化すること、論理的な文章を書く能力を身に付けなければいけないかもしれない。

*筆者にとっても超えなければならん壁ですわ。

(5)空気を読めの思想ごときでは、アインさん言いなりになるアイーン!
 空気を読めという思想では世界を席巻することは出来ない。そんな言葉へと変換できない思想は世界へと伝わらない。もし、空気を読めという思想を広めたいのであれば、それを言葉へと変換し、人類が享受できるメリットをこと細かに説明する必要がある。
 アインさんの思想は、言葉にしやすいし、世界帝国アメリカ発だ。小泉改革において、利己主義は日本人にも深く浸透した気がする。

さいごに
 私は、本物の個人主義とは、個人一人ひとりに己の思想を確立するように促すものだと思う。しかし、この著書では、各個人の思想を著者の思想へと誘導する意図が強く感じられた。そこに個人が思想を選択するという自由の余地は残っていなかった。その時点で、個人主義の論理が破綻している気がした。

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